星野誠 makoto hoshino

8300m以上で死体に恐怖を感じている人は、いなかった。

2019.1.6

「死体とか見たんですか?怖くなかったんですか?」

エベレストに登ったあとにいただくことの多い質問の1つ。

自分もエベレストに登る前に、YOUTUBEなどで、なくなってしまった遺体の動画などを目にした時は、勿論恐怖を感じていた。

自分はエベレスト8300m以上の地点で実際に7体の遺体をみたいのだけれど、それを見た時、何も感じなかった。恐怖を感じている余裕がなかったし、むしろ8300m以上では死というのが普通すぎて、それにいちいち驚かないというのが一番近い表現かもしれない。

なので、実際8300m以上の世界に入ったとき、死体をみて、恐怖をしている人は誰一人いなかったし、自分も恐怖という感情はなかった。

そのかわりいかに自分が死なないか、どうやって生き残るかそれだけに全神経が集中してた。話かわって、ブラジルのスラム街ファベーラを舞台の映画『シティ・オブ・ゴッド』や毎日人が1人は殺されていくブラジルのスラム街をとったドキュメンタリー映画の中で、

「いつ死ぬかわからない世界恐怖はないのか?」

という質問に「恐怖はない」と答えていた小学生の男の子を見たことがあるが、もしかすると、それもどこか似た心境なのかもしれない。

死が現実として隣にあると、恐怖が現実のものとしての共存する方向になるとか、恐怖という性質自体がどこか変わるのかもしれない。

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