8300m以上で死体に恐怖を感じている人は、いなかった。
死体とか見たんですか?怖くなかったんですか?
エベレストに登ったあとにいただくことの多い質問の1つ。
自分もエベレストに登る前に、YOUTUBEなどで、
なくなってしまった遺体の動画などを目にした時は、勿論恐怖を感じていた。
自分はエベレスト8300m以上の地点で実際に7体の遺体をみたいのだけれど、
それを見た時、何も感じなかった。
恐怖を感じている余裕がなかったし、
むしろ8300m以上では死というのが普通すぎて、
それにいちいち驚かないというのが一番近い表現かもしれない。
なので、実際8300m以上の世界に入ったとき、
死体をみて、恐怖をしている人は誰一人いなかったし、
自分も恐怖という感情はなかった。
そのかわりいかに自分が死なないか、
どうやって生き残るかそれだけに全神経が集中してた。
話かわって、ブラジルのスラム街ファベーラを舞台の映画『シティ・オブ・ゴッド』や
毎日人が1人は殺されていくブラジルのスラム街をとったドキュメンタリー映画の中で、
「いつ死ぬかわからない世界恐怖はないのか?」
という質問に「恐怖はない」と答えていた小学生の男の子を見たことがあるが、
もしかすると、それもどこか似た心境なのかもしれない。
死が現実として隣にあると、恐怖が現実のものとしての共存する方向になるとか、
恐怖という性質自体がどこか変わるのかもしれない。